13 マニアの世界

ちょっと想像し難い

 
世の中には色々な方面でマニアと呼ばれる人々がいて、興味の無い人には取るに足らないことや何がなんだか解らないモノにこだわりを持って人生を無駄に、、、いえ、楽しんでいます。
 
マニアと聞いて世間一般の人が最初に思い浮かぶのは、やはり鉄道マニアでしょう。マニアの正統、マニアの王道、マニア中のマニアといったところでしょうか。
 
今回は私の知り合いで、その世界にドップリと浸かっている人から聞いた話をしましょう。彼の場合、正確には鉄道マニアではなく乗り物マニアなんですケド。
 
乗り物が好きな人の多くは、電車やバスに乗るだけでは満足せず、その対象を写真に納め自分のモノにするんですが、当然、綺麗な写真が欲しいので持っている撮影道具は大抵一眼レフカメラと望遠レンズに三脚。何百枚、何千枚と写真を撮っているうち好きこそものの上手なれで写真の腕もかなりな人がいて、私の知り合いの人も下手な写真屋顔負けの技術を会得しています。
 
彼はプロが使うような最高機種の一眼レフカメラを数台持っているんですが、その内1台はいつでも撮影できるよう殆ど毎日のようにデイバッグに入れ背中に背負って出勤しています。昼休みや通勤途中、帰宅途中でもすぐ写真を撮れる体制にあるのです。
 
彼の守備範囲は一応、電車、飛行機、バス。私の聞いた限りでも、福岡発東京行きの長距離バスが廃止になるというので、住んでいる所から終点の東京とは逆方面の福岡までわざわざ行き、そのバスに乗って東京へ行ったり、ピカチュウやグレイなどの特別な塗装がされた飛行機に乗ると貰える限定グッズ目当てに飛行機に乗っていたりしています。
 
また、飛行機の写真を撮るために住んでいる所から800Kmも離れた成田空港まで撮影機材を載せてずーっと車で走って行ったりもします。「飛行機が好きなら何で飛行機で行かないの?」と思った人、あなたは私と同じフツーの人です。成田空港は広ーい所なので飛行機の写真を撮るのに都合のいい場所、つまり撮影ポイントに行くためには車でないと行けないというのがその理由なのです。
 
さて、今から8年前の2000年、明石大橋が開通して淡路島で花博が開催されていたある日、彼がずいぶん日焼けした顔で出勤してきたので、「どっか行っとったん?」と訪ねたら、「ええ、花博に。正確には花博の駐車場。」という返事が返ってきました。
 
たぶん、何のことかと思われるでしょうが、いわゆる観光地、特に博覧会のような大きな観光イベントには全国から観光バスが集まって来るので、そこの駐車場へ行けば色んな車種や同じ車種でも違うペイントを施したモノが停まっているワケ。
 
そう、彼はそのバスの写真を撮るために花博会場横の駐車場へ行ってきたのです。真っ黒に日焼けするわけです、ハイ。その後にオープンしたばかりのユニバーサルスタジオ、いやユニバーサルスタジオの駐車場に行ったのは言うまでもありません。
 
でも、こういうのは彼にとって極当たり前。ネットで知り合った同じ趣味の人たちと共同でバスをチャーターして、観光地駐車場巡りバスの写真撮りまくりツアーに参加したりもしていて、私はチャーターしたバスの前で集合記念写真を撮ったのを見せてもらったことがあります。
 
ところが、上には上がいるモンです。
 
ある日、彼が名古屋かどこかで乗り物好きのミーティングがあるので、大阪でバスに拾ってもらって参加するという話をしてくれました。そのバスは奈良あたりから数カ所で仲間を拾って名古屋まで行ったわけですが、そのバスはチャーターしたものではなく、なんとメンバーの一人が所有しているものだとか・・・。
 
ちょっと想像しにくいんですが、個人でバスを購入して時々運転しているんです。さすがに新車を購入したのではなく、かつてどこかのバス会社が使っていた中古ですが、それでも800万円位はするとのこと。さらには2階建てバスを持っている人もいると言ってました。税金は大したことないらしいですが、当然、車検はあるでしょうし、タイヤを交換するだけですんごい額になるのは想像に難くありません。なにより、いったいそのバスを普段どこに留めているでしょうか。
 
このレベルになると、私のような一般人には趣味や道楽を飛び越えてビョーキではないかと思えるのです。ちょっとした金持ちや芸能人なんかが、高価なだけで信頼性の低い外国産スポーツカーや何千万円もするクルーザーを持っていたりという話は珍しくありませんが、バスを持ってますというの聞いたのは、この時が生まれて初めてでした。
 
恐るべし乗り物マニア。
 
 
 

(2008.3.1作成)